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2020/11/26日現在で、GIGAスクール構想の実現に向けた本校の取り組みや課題、ICT教育やGIGAスクール構想についての私見をまとめてみました。これから取り組まれる学校の参考になれば幸いです。

GIGAスクール構想実現の課題(2020・11・26改訂)

タブレット納入まで

2020年7月10日段階の情報

年度内タブレット納品は不透明

当初、年内納品、次に3月末に納品予定となり、とうとう不透明に。行政当局に決して悪気はないと思いますが、本当にスピード感がない。

行政の取り組みについて

私は、ICT教育の推進において市町村行政当局との意思疎通ができない理由は以下の三つだと思います。

ちなみに、勤務地飯南町の行政当局は、教育への理解や支援への意識が県内でもトップレベルだと感じていますが、それでも今回のGIGAスクールの実現に向けた取り組みは遅々として進みません。この滞り加減については、町だけの責任ではないと考えられます。県・国それぞれの行政レベルで、きちんと検証していただきたいところです。

行政担当者及び納入業社と直接打ち合わせをする

ほとんどの場合、行政担当者はICT教育についてほとんど何も知りませんし、納入する機器や設計・設定に関する知識がありません。したがって、適切な設計や納入スケジュールについては学校が納入業社と直接やり取りすることが効果的です。

今回、頓原中学校では、Chrome bookからiPadへの切り替えとなるので、空白期間を作りたくありませんでした。したがって、タブレット納入時期や設定スケジュールについて、関係業者と技術的な打ち合わせを行い、その結果を行政担当者にわかるように説明しました。その結果、行政からは早急に発注をかけてもらい、業者は学校と連携しながら必要最小限の設定ののちに納入するということで話がまとまっています。これによってタブレットの納入時期が数ヶ月は早くなる見通しです。

タブレット導入までに検討しておくこと

タブレットの導入に際しては、どのように使うのかという「構想」を立て、それに即した付属品(タッチペンを何にするかとか会議用スピーカーマイクはどれにするか、ウェブカメラは必要か、単焦点プロジェクター・・・)等について考えたり、授業や家庭学習で活用するEdtechアプリの選定について考えたりすることが、行政と現場との共同作業として必要になると思います。

さらに、事前に教師用タブレットとPCを配備して、教師自身が活用の方法について研究することが必須です。飯南町では、2学期の早い時期に、全ての教員にタブレットを導入していただきました。

タブレットを導入しても、グループウェアの活用にまでは至りません。appleの場合は、スクールマネージャーの設定とスクールワークの設定、クラスルームの立ち上げが必要です。教育委員会単位で取得されるであろうスクールマネージャーのアカウントを使って、各校においてスクールワークが活用できるようにし、クラスルームを使ってどのようなICT環境が作れるかを検討することが必要です。その後にアプリの検討に入ってください。

市町村予算を獲得するために

機器の導入前に予算を確保することは、財政当局の理解や議会承認が得にくいです。

当然予測できることですが、財政当局は緊縮にモチベートしますし、議員の方が皆ICT教育やテクノロジーに詳しいわけではありません。

詳しくない方から見ると、ICT教育は単に高い機器を使う授業だとか、目的や効果が理解できない話、実感が持てない話と映りますから、大切な予算の執行を躊躇されるのも当然でしょう。

そこで本校が行ったことは、次の三つです。

第一段階として、可能なチャンネルを使って、教育魅力化コーディネーターが本校の取り組みと推進する上での課題を説明したり、校長が簡単な実践発表を行ったりしました。そして、なんとか議員視察(学校訪問)を実現しようとアプローチしました。

11月5日、トップページに掲載していますが、待望の議員訪問(教育経済常任委員会及び教育委員会事務局)が実現しました。帰り際、ある議員の方が「考え方が変わりました。」言ってくださいました。この訪問から潮目が変わったと思います。



今後の課題

頓原中学校の場合、積み上げてきたICT活用のスキルや環境が、今年2020年12月で途切れてしまい、生徒や職員がクラウドにあげているコンテンツが活用できないという状況が予測されます。このような事態が起こると、蓄積された教育資源が朽ち果ててしまうだけでなく、生徒や職員のモチベーションも下がってしまうことになり、学校にとっては甚大なダメージとなります。また、chrome bookからiPadへの切り替えにも少し時間が必要です。

GIGAスクール構想全般における課題



なぜ今 ICT教育か

根本的な話になりますが、ICT教育を推進する際に、日本では「なぜICT教育を推進しなければならないのか。」を説明しなければ納得も協力も得られません。

そういう国だから、主要国から「周回遅れ」と言われるほど情報技術で遅れをとったのだともいえるし、いや、それ以前に、日本が情報技術において後進国に凋落してしまっているという事実を知らないのではないかと疑いたくなります。知らないから危機感がない。さらに、教育関係者においても、学習に関する科学が新しいフェーズに入っていることの気づきや学びが十分ではないのかもしれません。そしてそれが、ICT教育と密接に関わっているという理解ができていないのだと思います。

それらのことを網羅して説明しているものとして、文科のYouTubeチャンネルから、以下の動画を紹介します。教育関係者は、59分以降をぜひご覧ください。

できる家庭から行います

現在、文部科学省が言っていることは「『各家庭全てに環境が整わなければICTはやらない。』というような選択をしてはいけない。」という意味のことです。さらに、一律にできないからやらないという考えは、「大きな間違い」であり「言い訳」であり「逃げている」のだと、強く糾弾しています。しかし、教育関係者の中には、いまだに「一律主義」を主張する人が多い。世界の中の日本のランクで、もう、そんなことを言っている場合ではない。そういう主張をする人は、社会科学的な世界認識が不足しており、かつ、国家に対する責任感とか危機感が足らないのではないかと私は思います。そして何より、教育学はすでに、平等一律主義から「個別最適化」の時代に進化しています。


GIGAスクール構想に危機があるとすれば

  • GIGAスクール構想が、過去のICT整備同様に「使えないICT」になってしまう危機
  • 高速回線・クラウドベース・ウェブアプリケーションという構想を、地方自治体や設置者教育委員会が理解できないという危機
  • 「教育の実現」ではなく「機器の設置という事業の実現」になってしまうという危機

回線速度

GIGAスクール構想は、下の「標準仕様書」に様々な「基準」が示されています。例えば回線速度。学校に接続する基幹回線の速度は1Gbpsを基準とすることとなっています。しかし、自治体によっては基幹回線がCATV回線の50〜100Mbps程度で計画されているところもあるようです。これでは遅すぎて、GIGAスクールで想定している使い方はできません。回線に関する技術的理解が不十分で、行政として適切な対応ができない自治体が多いのではないでしょうか。

校内設備

基幹回線が100Mbpsの極低速であろうとも、校内の設備は、「校内LAN整備の標準仕様書」通りに、1Gbps基幹回線の速度を前提とした高スペック製品によって固められます。具体的には、カテゴリー6AのLANケーブル(最大10Gbpsの通信が可能)やレイヤー3のスイッチ(ネットワークを物理的に分離できる)、VPN、PoEスイッチ、無線LAN認証装置などである。100Mbpsの基幹回線に、これらの設備を引っ付けることは、まるで、畦道沿いに高級ブティックをたくさん建てるようなもの。つまり、ただの無駄遣いとなります。

文科省・政府の思いは伝わらない

このページに貼り付けているYouTube動画にあるように、政府・文科省は、今回かなり突っ込んだ説明や指導をしてきました。「これが最後のチャンス」とか「今年やらないのなら、やらない理由の説明責任が生じる。」など、強い語調で訴えています。そして、「できれば夏までに機器を揃えてほしい。」と期限も設定しました。しかし、例えば本県の場合、公式の整備進捗状況はアナウンスされません。したがって、何がどうなっているのが現場は全く掴めない状況でした。これでは何の準備もできません。やはり、地方自治体におけるGIGAスクール構想の優先順位は低く、今、機器を必要としている学校や家庭には対応できていないというのが現実です。

学校の思い

自治体の認識が間違っていて低速基幹回線に繋がれたりすると、たとえば本校のようにICT教育が進んでいる場合、一人一台の端末が整備されネットワークに接続する数が増えることによって、既に教材コンテンツとしてクラウドにあげている動画や、G suite for Educationで運用しているclassroomが、校内では満足に使えなくなります。ICT教育を進めれば進めるほど物理的に使えなくなるという逆説的な事態は、全国の学校で起こることが容易に予測できます。

頓原中学校は、世界各地の注目の事例(45例)として取り上げられていますが、その学校ですら今後の活用に際しては学校だけでは解決できない様々な困難が待ち受けているという状況です。

まとめ

回線速度の確保

述べてきたように、GIGAスクール構想も、それにかかる補助金事業「公立学校情報通信ネットワーク環境施設整備費補助金事業」も、高速ネットワークを前提とする事業です。自治体は、まず高速回線を確保するところからスタートすべきでした。低速基幹回線に高額な高速回線用校内設備を引っ付けるような無意味な設備投資は倫理に反すると思います。

中山間地域では光回線事業者による回線整備が期待できず、CATVに頼ることが多いです。そんな中、例えば島根県では山陰ケーブルテレビジョンが、10Gbpsプランをエリア内の家庭に提供しています。さらにその「バックボーン」は、県内のCATV事業者にも提供されるようです。そして、中山間地域では各家庭の屋内まで光ケーブルを敷設している自治体が多くあります。しかし、現状ではこのケーブルのスペックを十分に活用することができていません。この設備を高速対応させることは難しくありませんし、高速対応によるメリットはたくさんあると思いますので、ぜひ施設設備のスペックを生かす努力をしてほしいと思います。

世界に追いつくために

GIGAスクール構想が、過去のICT整備事業やICT教育が犯した過ちを再現してはいけないと思います。基幹回線とのバランスが取れていない校内の施設整備とか、利用可能性がない多機能な高額ルーター・スイッチなどの整備というのは、誤解を恐れずに言えば、これまでのICT整備事業におけるお決まりの過ちだったはずです。そしてその原因は、事業に関わる人間の「無知」によるものです。GIGAスクール構想が、同じ道を辿るのを阻止しましょう。そして今は、日本のICT技術の停滞やICT教育の遅れを止める踏ん張りどころであり、最後のチャンスです。もし、GIGAスクール構想が正しく実現できなければ、すでに、この分野で失いかけている国際競争力は、完全に失ってしまう可能性が高い。さらに、現状認識が甘い学校関係者に伝えたいことは、日本が今後数十年でgoogleのAIやアルゴリズムに追いつけるというような楽観主義には、到底立てないということです。ここ数十年間、学校は、「世界で通用するICT人材」の育成を怠ってきたのだという現実に、しっかりと向き合うべきだと思います。

教育関係者は、危機感と責任感を持ってGIGAスクール構想の実現に取り組む時です。

新型コロナウイルス感染症に対応した
持続的な学校運営のためのガイドライン(6月5日)文部科学省

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(5)学習指導

・ICTの活用

児童生徒に家庭学習を課す際や学習状況の把握を行う際にはICTを最大限活用して遠隔で対応することが極めて効果的であることを踏まえ,今回が緊急時であることにも鑑み,学校の設置者や各学校の平常時における一律の各種ICT活用ルールにとらわれることなく,家庭環境やセキュリティに留意しながらも,まずは家庭のパソコンやタブレット,スマートフォン等の活用,学校の端末の持ち帰りなど,あらゆる機器や環境を最大限活用する。そのために,各学校及び学校の設置者において,家庭の通信環境について至急把握する。

一方,家庭の端末等を活用することはあくまで緊急的な対応であり,各設置者において一刻も早く児童生徒のICT環境を整えることが必要である。このため,各設置者においては,令和元年度補正予算,令和2年度補正予算における端末や通信機器整備支援も活用し,直ちに調達行為に入るとともに,納期を分割することなどにより,特に早急に整備が必要な分は優先的に整えるなどの対応を行う。これにより,遅くとも令和2年8月までには,少なくとも小学校第6学年・中学校第3学年等の最終学年の児童生徒や,経済的理由等でICT環境を準備できない家庭に対してICT環境が整備されることを目指す。

 

また,ICTを活用した家庭学習に係る低所得世帯への通信費の支援については,就学援助(要保護児童生徒援助費補助金),特別支援教育就学奨励費(要保護世帯)及び高校生等奨学給付金において,通信費相当額を追加支給することとしており,これらの支援制度等を周知し,活用を促す。

 

さらに,ICTを活用した遠隔での指導等を行う際の著作物利用に係る著作権等の取扱いについては,平成30年著作権法改正による「授業目的公衆送信補償金制度」が4月28日に施行され,著作権者等の許諾を得ることなく円滑な著作物利用が可能となっていることに留意すること(補償金額については,令和2年度は特例的に無償)。

・各学年の修了及び卒業の認定等

 

臨時休業等に伴い,やむを得ず学校に登校できない状況にあった児童生徒については,各学年の課程の修了又は卒業の認定に当たっては,弾力的に対処し,その進級,進学等に不利益が生じないよう配慮する。