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在日

20世紀はじめから中ごろにかけて、日本が朝鮮に対して行った植民地政策の下で、連行や移民・密航などによって来日し定住していった人々を「在日韓国朝鮮人(※在日)」(在日コリアン)といいます。その子孫として、現在日本に暮らす人たちは60万人以上(統計の取り方によっては80万人から90万人)といわれています。その多くは、日本で生まれ日本人と同じように育ちながら国籍は「外国人(韓国または朝鮮)」です。彼らは、日本人の民族差別意識にさらされながら生きる人々であり、また、制度のうえでのさまざまな障壁に人生を阻まれながら生きる人々です。さらに彼らは、生まれ育った日本にも、国籍のある韓国や朝鮮にも本当の故郷がもてない「故郷を奪われた」人々です。

この本の作者「姜尚中」さんは、テレビのコメンテーターとしても活躍しておられます。本業は、東京大学の教授で国際政治学者です。その姜さんが傾倒する思想家の一人に、この本の中でも紹介されているE.Wサイードがいます。サイードは、現代を代表する思想家の一人ですが、彼もまた「在日」と似た境遇にある「国を追われた民」、パレスチナ人です。

サイードは、押しも押されもせぬ世界第一級の思想家です。彼の話には大変説得力があり、世界中のたくさんの人々が彼の考えにうなずき、そしてその考えに従って行動する人さえいます。なぜサイードには、言語・文化・宗教・国籍・民族が異なる全世界の人々に影響を与え行動を起こさせるような力があるのでしょうか。それは、彼がいかなる権力にも屈せず、いかなる利害にも影響されず、いかなる「立場」にも立たない素直で公平で深みのある言動をする人だからだと思います。そういう彼の公平さと深さが人々の深い信頼を集めているのだと思います。

姜さんの東アジアの情勢についての分析は、常に本質を突き説得力があります。それはきっと、在日韓国朝鮮人として生まれた姜さんが、「在日」としての自分の立場を正面から見据え、受け止め、乗り越え、サイードのような中立で揺るがない自分のポジションを確立したからではないかと思います。

自分の生い立ちを振り返りながら、現在の自分に行きつくまでの心の移り変わりや成長を語ってくれるこの本から、「ゆるぎない信念への険しい道のり」を読み取ることができます。

注※ 「在日」という縮めた言い方は、あまり適切な用い方ではないと思いますが、ここでは、書籍の題名という文脈の中で用いています。通常は「在日コリアン」または「在日韓国朝鮮人」とするのが適切だと思います。

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